現場の手引き | 無料
ひび割れ補修で揉めるのは、ほとんど「幅をどう測って、どの工法にしたか」の根拠です。調査のときに幅と挙動を記録し、記号を工法の区分で分けておけば、数量も精算も自然に通ります。
幅を測る前に、原因の見当を付けておくと工法の判断が早くなります。外壁でよく見るのは次の 4 つです。
| 種類 | 見た目・出る場所 | 補修の考え方 |
|---|---|---|
| 乾燥収縮・温度によるひび割れ | 開口部の隅から斜めに、壁の中央に縦に、長い壁に等間隔で。幅は細〜中くらい。温度で開閉する(挙動がある)ものが多い | 幅で区分。挙動があれば伸びに追従する材料で |
| 網状(ヘアクラック) | モルタル表面に細かく網の目状。幅 0.2mm 未満が多い | 表面を被覆(シール工法・塗膜)で止める |
| 鉄筋の錆によるひび割れ | 鉄筋に沿って直線に、錆汁がにじむ、周りが浮く・爆裂 | ひび割れ補修でなく、はつり → 防錆 → 断面修復 |
| 構造的なひび割れ | 梁・柱・壁の端部に斜めに、幅が大きい、段差がある、貫通している | 設計者・監理者に報告。勝手に工法を決めない |
写真は、スケールを当てた寄りと、面と階が分かる引きの 2 枚。幅の数字を写真に残しておくと、精算で「本当に 1mm あったのか」を聞かれても困りません。
公共建築改修工事標準仕様書などで一般に使われている区分は、おおむね次のとおりです。設計図書・特記仕様書の指定が最優先で、版や物件で境目が変わります。
| 幅の目安 | 工法 | 内容・向き不向き |
|---|---|---|
| 0.2mm 未満 | シール工法(表面被覆) | ひび割れの上に可とう性エポキシ樹脂やポリマーセメントを塗って表面を覆う。網状のひび割れや細いものに。塗装で隠れる |
| 0.2mm 以上 1.0mm 以下 | 樹脂注入工法(低圧注入など) | ひび割れに沿って注入口を 200〜300mm ピッチで付け、エポキシ樹脂を低圧でゆっくり入れて内部まで埋める。挙動があれば可とう性エポキシなどの伸びる材料にする |
| 1.0mm 超、または挙動が大きい | U カットシール材充填工法 | ひび割れに沿って U 字形に溝を切り、プライマーの後にシーリング材や可とう性エポキシを充填し、表面をモルタルなどで仕上げる。動きに追従するが、溝を切るので仕上げが要る |
| 錆汁・浮き・爆裂を伴う | はつり → 防錆 → 断面修復 | ひび割れ補修の項目ではなく、爆裂補修の項目で数える(箇所または面積) |
記号を「0.2mm 未満(シール)」「0.2〜1.0mm(注入)」「1.0mm 超・挙動あり(U カット)」の 3 つに分けておくと、記号の数量がそのまま工法ごとの数量になります。幅を細かく分けすぎると、現場で迷って記録が止まります。
ひび割れの数量は長さ(m)で拾います。樹脂注入は見積が注入口(m あたり何口)で組まれることがあるので、長さ 1.8m・ピッチ 250mm → 注入口 8 口、のように長さと口数の両方を数量表に出しておくと、どちらの積算にも合わせられます。
同じ形(線)で色だけ変えると白黒コピーで分からなくなるので、挙動ありは波線・なしは実線、のように線の種類も変えておくと図面だけで伝わります。
記号の形・色・単位の例は 凡例の見本集、面ごとの数量表の作り方は 下地補修の数量の拾い方 にまとめています。
仕上げの手間と費用が増え、溝だらけで見た目も悪くなります。0.2mm 未満は被覆、1.0mm 以下は注入、と区分して記号を分けます。
温度で動くひび割れは、硬質エポキシでは追従しません。調査時に「挙動あり」を備考に残し、可とう性の材料か U カットにします。
U カットの仕上げ面が周りと違う、注入口の跡が残る、などが原因。補修後の仕上げ(パターン合わせ・下地調整)まで補修図の備考に書き、検査の記号で追いかけます。
バルコニーの手すり壁やパラペットは、外側のひび割れが内側まで通っていることがあります。片面だけ補修すると雨水が回ります。両面の記録を残し、同じ番号で結びます。
Marky(マーキー)は、立面図に記号を置くだけで、記号ごとの数量(m・m²・箇所・穴・枚)を自動で集計し、面ごとの数量表と明細を Excel に出す現場向けのアプリです。タイルの曲り・マグサの換算(例:曲り×2)も記号ごとに設定できます。